いい写真、いい仕事は、いい言葉をつくることから始めたい

 こういう写真が撮りたい、と思うことがある。それは、いい写真を見たときではなく、いい言葉を聞いたときだ。

 たとえば、「い・け・な・いルージュマジック」。1982年、いまは亡き忌野清志郎氏と坂本龍一氏がコラボして出したシングルで、資生堂のCMソングだ。この曲のタイトル、最初は「すてきなルージュマジック」だったそう。ネットで見た2次3次情報なので真偽のほどはわからないけれど、本当かどうかは私にはそれほど重要ではない。「いけない」と題したそのセンスがとてもうらやましくてならないのだ。

 「すてきな写真」は誰にでも撮れそうな気がするけど、「いけない写真」はなかなか撮れそうもない。撮れたらすごい。「いけない」をテーマにしたら、名のあるクリエイターはどんな写真を撮るのだろうか。タブーな雰囲気とか、茶目っ気のある感じ? それは言葉に対してあまりにストレートすぎるか。とにかくパッと見た目、誰もが「いい!」と思うような「すてきな写真」とは少し違うものになると思う。

 JR SKISKIのキャッチコピーなんかもいい。特に山口広輝氏が担当した2012~2021年。そのなかでも私は2014年の「答えは雪に聞け」が最高だと思っている。初めて目にしたときは、答えは雪に聞け・・・なんてすごいんだ、と感動さえした記憶がある。

 まず最初にいい言葉をつくれたら、いい写真、いいクリエイティブができるし、その言葉のもとに集まった人たちによって、いい仕事ができるのではないだろうか。

 さて、写真は、長崎市の出島にあるヴィンテージビル「村川ビル」。細い三角の地形に合わせて建っているので、出島電停側から見ると、鋭角に尖った形をしている建物だ。

 2023年10月某日撮影

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