ユニクロの歴史を紐解くノンフィクション「ユニクロ」を読んだ

長崎県庁

 ユニクロの歴史を紐解くノンフィクションの経営書「ユニクロ」を読んだ。ユニクロの歴史というより、創業者の柳井正氏の歴史といっても良い。読むと、ユニクロがこうなっていった、というより、柳井氏がこうしてきた、という経営の意思が伝わってくる。

 著者は、日経新聞の杉本貴司氏。実は私、杉本貴志氏と間違えて本書を購入してしまった。ユニクロに興味があったわけではなく(だって、題材として今更ユニクロ?って思いませんか)、杉本貴志氏が書いた本なら、と思って即買いしてしまったのだ。無印良品のイメージが強い杉本貴志氏が実際にユニクロと関係があるのかどうかは知らないけれど、そういうこともあるのかもと思ってしまった。

 しかし、読み始めると、あれ? 杉本さんって、インテリアデザイナーでありながら、こんな小説のような文章が書けるのか、となにか違和感があった。そこではじめて本の著者プロフィール欄を見ると、日経の人だった。「志」と「司」だけが違う、同姓同名の人だった。なんだかおかしいと思った。

 この本とはそういう出会いではあったのだけど、結果的に読んで良かった(間違えて良かった)。とてもおもしろい。読むと、経営とは、目標の高さと明確なビジョン、実行力にあるということがわかる。目標の高さと明確なビジョンと実行力。言葉で言うのは易いのだけど、そこには不退転の強い意志が必要なのだと思う。特に、目標(なりたい姿)を具体的に描くことができるのは、才能の一つといっていい。

 ユニクロは、柳井氏が家業の紳士服店を先代から引き継いだところから始まり、ユニクロ(ユニーク・クロージング・ウェアハウス)をスタートし、西日本でチェーン展開をする。ここではまだ小売業(他人がつくったものを仕入れて販売する)に過ぎなかった。次なるステップは、小売から製造小売業(SPA)への転換。東京への進出(全国展開)。世界への進出。そして、製造小売業をさらに進化させた、情報製造小売業(売れるものをつくって売る)への転換。

 会社の生い立ちとしてはだいたいこういうものだが、本書がおもしろいのは、それらのステップに携わったユニクロの人々の物語だ。もちろん、メインは柳井氏なのだが、組織が大きくなっていくごとにキーマンが登場する。これは、ユニクロの「人」の物語。読めば、勇気と希望が湧いてくる、そんな本である。

 私もユニクロを愛用しており、エアリズムやウルトラライトダウンなどを着ている。その昔、現在と比較するとまだ小さな会社だったユニクロが、大企業・東レに協力を申し込み、驚くのは、さらに東レの社内にユニクロ専門の部署を立ち上げてほしいとお願いしたのだそうだ。もちろん、交渉したのはトップの柳井氏である。最初は当時ユニクロの「顔」だったフリースの製造から始まったようだが、エアリズムやウルトラライトダウン、そしてあのヒートテックなどもその後の東レとの共同開発によって生まれている。

 写真は、GRⅢのワイドコンバージョンレンズのテストで撮った、長崎県庁。

 2024年4月某日撮影

関連記事