全国で今夏リバイバル上映中の「風が吹くとき」を観た

 1986年に英国で制作され、翌年には日本でも公開されたアニメ映画「風が吹くとき」が、この夏、全国でリバイバル上映されている。先週、私も劇場で観てきたのだけど、とても印象に残る映画だった。

 日本に原爆が投下され、世界大戦が終わったあとの時代。英国の片田舎に住む老夫婦は、また新たな戦争が起こり、英国に核爆弾が投下されるという知らせを聞く。夫婦はさっそく、政府発行のパンフレットに従ってシェルターをつくる。そして、核爆弾の投下は現実となり、激しい爆発が起こる。老夫婦は生き残り、引き続き政府のパンフレットのマニュアルに従ってシェルター生活を始める・・・といったストーリー。

 衝撃なのは、現代の人が見るとどう考えてもおかしいこのマニュアル(パンフレット)が、現実に存在したものであるらしいということ。これがシェルターだなんて・・・ときっと誰もが思うことだろう。老夫婦が核爆弾の被害をだいぶ少なく見積もっているところ(すぐに元の生活に戻ると思っている)も知識や情報がそれだけ不足していたのだろうと想像できる。

 パニックに対応するマニュアルって、難しい。現代の日本では、災害が起こるとニュース番組なんかで「命を守る行動を!」が連呼されるけれど、一般の人が「命を守る行動」を正しく実行するには、災害知識や豊かな想像力が求められるのではないか。私も有事の際に、避難場所と避難所の違いを正しく思い出せるだろうか、なんてちょっと不安になる。

 昔はもっと、こうせよ、と指示が具体的かつ独断的だったのかもしれない(たとえそれが間違いであったとしても)。現代では、渦中の人に判断をゆだねているような気がする。結局、判断できないので答えを検索するのだけれど。どちらが良いのかはわからない。

 写真は、GRⅢのワイドコンバージョンレンズで撮った、長崎市の夜の繁華街・思案橋の裏の風景。かつて賑わっていた思案橋は、メイン通りから少し路地に入るとこのような建物もある。

 2024年6月某日撮影

関連記事