坂口恭平氏の著書「生きのびるための事務」を読んだ

長崎思案橋

 坂口恭平氏の著書「生きのびるための事務」を読んだ。坂口氏のことは、昔「TOKYO 0円ハウス0円生活」という本を読んで知った。当時は、作家・建築家という肩書きだったように思う。時が過ぎ、今回の「生きのびるための事務」に載っている著者プロフィールには、作家・建築家・画家・音楽家など、となっている。肩書きが増えている。不思議な人だ。

 この本で出てくる「事務」とは、なりたい自分になる、自分らしく生きる、そのための「手続き」のことを「事務」と呼んでいると思った。やりたくないことをすべて排除して、やりたいことだけで人生を計画するというのは、なかなか難しい。ライフワークを持っている人はいつだってうらやましい存在で、多くの人はお金のための仕事「ライスワーク」をやっているからだ。

 この本の「事務」のすごいところは、そもそもお金のことをいちばんに考えていないところにあると思う。生きていく上で最低限いくら必要か。それがもしも月額10万円だとしたら、それを稼ぐだけの「ライスワーク」はやるけれど、それ以外はすべて「ライフワーク」をやると決める。普通は自分がやりたいことで食っていけるかどうかを考える。そして、大半は「食えない」と考えて諦めてしまう。

 本書は一冊まるごとマンガ形式で描かれており、「事務」のコンサル役として、「ジム」という不思議な人物(ロボット?)が登場する。本のなかで坂口氏は「事務」をジムと二人三脚でやっていくわけなんだけど、現実世界では、ジムは坂口氏の内面にいるわけで、書いてあることすべて坂口氏がひとりでやってきたのだろうと思うとすごい。

 今日、たまたま読んだネットニュースに、サッカー日本代表の遠藤航氏のデュエルの強さについて、「自分の頭のなかにあるものをしっかりと身体で表現する能力に長けていると思う」と本人が自己分析したインタビューが載っていた。

 私は、そもそも遠藤選手の「自分の頭のなかにあるもの」が長けているのだろうと本書とつなぎ合わせてそう思った。イメージできていないものは、身体で表現できないからだ。

長崎思案橋

 写真は、GRⅢのワイドコンバージョンレンズで撮った、長崎市の夜の繁華街・思案橋。昔は夜になると、原宿の竹下通り並み?に人であふれていたナイトスポットだ。現在は、夜になってもそれほどの賑わいはなく、ところどころに廃墟のようになっている部分も見られる。

 2024年6月某日撮影

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