待遇や働きやすさよりも「働きがい」を求めている人
先日、友人と会ったときのこと。めずらしく仕事の話になった。どうやら勤めている会社の経営者との価値観の違いに心が疲れてきているようなのだ。
話を聞いてみると、私の友人は他社との違いをつくり、それを強みとした戦略を推しているのに対して、経営者は逆に模倣専門だということらしい。新しいことを先頭でやることを極端に嫌がるそうだ。模倣専門だと、あっさり言ってしまえば何も考えない戦略なので、働き手としてはおもしろくないのだろう。
聞いていて思ったのは、模倣専門経営は、なんだかインデックス投資に似ている気がする。インデックス投資は指標に連動した投資方針で、たとえば日経平均を指標とした場合、日経225の企業の株を全部買えば連動する。普通はわざわざそういうことをしなくても日経平均を指標にしたファンドはたくさんあるのでそれを買えば良い。株価が上がろうが下がろうがとにかく指標と連動することを目指した投資手法だ。
模倣専門の経営は、自社より規模が大きい、あるいは、自社より業績の良い同業他社の戦略や戦術をそのまま真似するので、業界のど真ん中をいく。だから、業界全体の業績と自社の業績が連動する(もちろん、規模や多少の質の差は生じるけれど)。
もしもそうした会社が多いと、似たような会社がいくつも出来上がる。このグループに入るのは過度な競争を強いられそうで危険極まりないように思うのだが、一方では、たしかに開発コストがゼロだし、指標(それでうまくいっている同業者)に連動した比較的安定したポジションとも考えられる。どこの会社でも同じことをやっているので、自社の製品やシステムが比較的容易に顧客に受け入れられるというメリットもある。
一方、違いをつくる戦略だと、場合によっては、プロダクトインで戦略を立ててしまい、まったく売れないということもあるかもしれない。ただし、模倣専門だと、顧客を観察してマーケットインするのではなく、同業他社を観察してマーケットインするので、戦略もなにもないのだけれど。
友人が言いたかったのは、どちらの戦略が正しい、正しくない、という議論ではなく、そこで働く人々の心の問題なのだということ。
模倣専門だと「価値をつくる事業」ではなく、「お金をつくる作業」になってしまう。ただの作業だとそれに疲れてしまう人も多い。昨今の「働き方改革」とは、「働きやすさ」よりも、むしろ「働きがい」のほうが働き手を惹きつけるのかもしれない。そして、私も「働きやすさ」を求める人よりも、「働きがい」を求めている人と一緒に仕事できたら幸せだと思ったのだ。
写真は、GRⅢでスナップ撮影した、那覇市の沖縄ホテル。1941年に誕生した沖縄最古の観光ホテルだ。那覇のモノレール「ゆいレール」の駅から徒歩圏内とはいえ、良い立地とは言えないが、一度泊まってみたいと思った。
2024年12月某日撮影