映画「ブルーピリオド」はただの文化系スポ根ではなかった

長崎 精霊流し

 映画「ブルーピリオド」を観た。美術ど素人の高校生がわずか2年たらずで東京藝術大学合格を目指すストーリーだ。あっさり言ってしまうと文化系のスポ根モノなのだが、主人公の体験を通して学びの多い映画だった。

 元々の主人公には自分というものがなく(たぶん)、他人と合わせながら生きている普通の高校生。ある日、学校の美術室で見た、誰かの描きかけの絵に心が動く。そんなとき、よくオールで遊んでいる渋谷の朝が「青い」というイメージをそのまま絵にした作品を授業の課題で描いた。これが周囲からいい評価を受けたことをきっかけに美術に興味を抱いていく。やりたいことが見つかった瞬間だ。

 自分が本当にやりたいことを見つけられる人はとても少ない。「才能があるのではなく、絵のことを考えている時間が人より長いだけ」。劇中に出てくる先輩がいうセリフだ。いい作品は、作者の熱中から生まれるものだと思う。

 マルコム・グラッド氏の著書「天才! 成功する人々の法則」によると、あのビートルズも売れる前にものすごい量のライブ演奏を行っている。好きなことなら、圧倒的な「量」に耐えられるのだ。ブルーピリオドの主人公も、描いて描いて描きまくって、技術の上達だけじゃなく、絵画の本質に迫っていく。

 受験本番。無事に一次試験を突破した主人公は、二次試験の三日間に挑む。一日目、周囲がどんどん描き進めているなか、主人公だけが最初の一日を丸ごとプロット(出題されたテーマに対して自分が表現するものは何か)を考えることだけに費やしている。写真の撮影でも、撮りながら(手を動かしながら)発想していくことはもちろんあるが、最初に戦略を立てて撮り始めるときとそうでないときの差はたしかにある。

長崎 精霊流し

 写真は、GRⅢxで撮った長崎の精霊流しの風景。精霊船で「龍(じゃ)」を見ることができるとは。大きく開いた口から出ている長い舌に装着された花火によって、龍が火を噴いているように見える(でも、たびたび首を下げて花火を入れ替えていたので大変そうだった)。

 長崎の精霊流しを初めて見たときは、あまりの激しい爆竹音に、これが本当に日本なのかと思うほどのインパクトだった。今回、隣で見物していた外国人(観光中にたまたま遭遇したらしい)に、これは何の儀式かと尋ねられた。ただのお祭りでなく「何かの儀式」とちゃんと伝わっていることがうれしかった。さぞかし驚いただろうな。

 2024年8月15日撮影

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