普段は音楽を買わないのに、レコードやカセットテープなら買ってしまう

日銀前公衆トイレ

 昨年から、フィルムでの撮影を復活させた。やはりアナログはいい。ところで、アナログを復活させたのは実は写真だけではない。音楽をレコードやカセットテープで買うようになったのだ。

 私の場合、音にこだわりがあるわけではないし、デジタルとは異なる「お手軽ではない」所作を楽しんでいるわけでもない。音楽を買っているというより、どちらかといえばモノを買っている感覚のほうが明らかに強い。

 カラーヴァイナルという、レコード本体に色や模様がついている仕様のものがある。さすがに私は通常版と重複して購入するほどのコレクターではないけれど、買う予定がなかったのにカラーヴァイナル仕様が出たおかげで、まんまと購入することはある。中森明菜の「LP’87」がそれである。あの名曲「DESIRE」が収録された限定版だ。「限定版」という言葉にも弱い。

 昨年買ったレコードは、大瀧詠一、尾崎豊、あいみょんなど。スピッツや山下達郎のカセットテープも購入した。なかでも特に良かったのは、大瀧詠一の「NOVELTY SONG BOOK」。「A LONG VACATION」以前の大瀧詠一が好きな方にはおすすめです。

 プレイヤーは、レコードやカセットも両方再生できる、TEAC(ティアック)のLP-R520を使っている。昨今CDもデジタルでありながらレトロな媒体になりつつあるように思う。LP-R520はCDも再生できるので、読書のお供にはCDでジャズを流している(日本語の歌詞が入っている曲を流すと、耳がそれをひろってしまい読書が進まない)。CDのほうがレコードやカセットテープより連続再生時間が長いから読書には向いてると思う。これがCDの良いところ。

 レコードやカセットテープの良いところは、A面とB面があって、だいたい両面とも1曲目はポップで調子の良い曲から始まって、最後の曲はバラードで締めるといった構成になっていることが多く、そのストーリーを楽しめる。一方、CDだとせっかくそういうストーリー構成になっていても気がつかないし、ダウンロード形式の音楽ファイルにいたっては、曲単体で購入することも多く、そもそもアルバムの曲順や構成なんかはほとんど意味がなくなってしまっているのではないだろうか。

 CDやレコードはどうしても1曲目を多く聞く確率が高くなる。途中で再生を止めてしまうと、次に再生したときにまた1曲目に戻ってしまうからだ(意図的に数曲飛ばすことはもちろんできるけれど)。そのあたり、カセットテープは一旦止めても、止めたところからまた再生するので同じ曲を何回も聴く羽目にはならない。これがカセットテープの良いところ。

 いずれの媒体にしても、音楽を「モノ化」することで売ることに成功していると思う。私の場合、ダウンロード形式で音楽を購入することはとても少なく、ユーチューブで聴くか、せいぜいCDをレンタルするくらいだ。それなのに、レコードやカセットテープだったら買ってしまう。

 人々の購入意欲をどうやるとかき立てられるか、ということを考えるのにとても参考になる。世の中の役に立つものを発明する、というのはとてもハードルが高いけれど、すでにあるものをどうやって売るか、ということを考えることができれば、様々な業界で役に立つのではないだろうか。広告でなんとか売ろうとする感覚では消耗戦になるからだ。

 さて、写真は、長崎市の日本銀行長崎支店前の公衆トイレ。石づくりの佇まいがロンドンっぽくて良い(行ったことないけど)。

 2023年10月某日撮影

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