村上春樹氏の1983年の著書「中国行きのスロウ・ボート」を読んだ

十八親和銀行本店

 村上春樹氏の1983年の著書「中国行きのスロウ・ボート」を読んだ。なぜ、今ごろ?と思う方もいると思うが、今年になって、その単行本が復刊されたのだ。表紙の絵を安西水丸氏が担当しており、水丸氏と村上氏はこの本で初タッグを組んだようだ。そして、村上氏にとってもこれが最初の短編小説集である。

 この短編集の1番人気は、本のタイトルにもなっている「中国行きのスロウ・ボート」、ではなく、たぶん「午後の最後の芝生」だろう。ある学生がアルバイトで芝刈りをしているのだけど、次の仕事を最後にもうやめようと思っている。その最後の芝刈りの様子が描かれた短編小説だ。

 そして、私のいちばんのお気に入りは、「シドニーのグリーン・ストリート」。シドニーのなかで最も冴えない通り、グリーン・ストリートで私立探偵を営む主人公(実はお金持ち)のお話。なぜ、お気に入りかというと、羊男が出てくるからだ。私は、羊男が登場する「羊をめぐる冒険」などを過去に読んでいるのだけど、未だに羊男がなんなのかよくわからない。羊男は特定のひとりを指すのではなく、世界中に何人もいることだけはわかっている。今回の羊男は、羊博士に奪われた耳を取り返してほしいと主人公の元に依頼に来る。よくわからないのだけど、なんだかおもしろい。

 そういえば、安西氏といえば、鎌倉の銘菓、豊島屋の鳩サブレーのパッケージイラストも書いている。前に、鎌倉本店に鳩サブレーを買いに行ったら、店内の壁に安西氏の作品「東京タワーと鳩サブレー」が飾ってあった。すごく良かった。

 今月、安西水丸事務所監修の「MIZUMARU’S」という本が発売される。生前の安西氏が集めたグッズコレクションの数々を紹介している(それらはイラストのモチーフにもなった)。このなかに、「東京タワーと鳩サブレー」のモチーフになったグッズも紹介されているようだ。

十八親和銀行本店

 写真は、GRⅢのワイドコンバージョンレンズのテストで撮った、長崎市の十八親和銀行本店。元々は、親和銀行との合併前の十八銀行の本店だった建物だ。現代の新しい建物は、このような湾曲したデザインのものがとても少ない(特に地方都市では顕著)。象徴的なモノづくりよりもコストが優先されているのだろう。

 2024年4月某日撮影

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