毎日同じ方法を繰り返しているだけなのに、今日は異なる結果を期待している

メットライフ生命長崎ビル

 家でデグーを飼っている。デグーとは、チリの山岳地帯の原産で、見た目はネズミに似ていて、知能が高い(人間の3歳児と同じくらいと言われている)。人によく懐く動物で、これほど手間がかからず飼いやすいペットはほかにはないかもしれない。

 散歩いらない、お風呂いらない(自分で砂風呂に入る)、体が丈夫。さすがに真夏の暑い日にはクーラーをつけっぱなしにすることはあるけれど、冬はケージのなかにペット用のヒーターがあれば室内を暖かくする必要もない(九州での話です)。草食だし、サイズも小さいので、かかる費用も少ない。2泊くらいの旅行なら、ケージに入れたままでも独りで何事もなく留守番してくれる(現在のところ、最長3泊4日の経験あり)。ペットショップの店員さんはとても強気で、一週間はいけるって言ってたけど。名前を呼べばとんで来るし、態度や鳴き声でいまの気分がわかる。ご機嫌なときは「ぴよぴよぴよ」って鳥みたいに鳴くし、嫌なときは手で「どけ」みたいにする。とても賢いし、本当にかわいい。

 生後1か月で我が家にやってきたころは、あまりに小さく、あまりのか弱さゆえに、あまり干渉せずに大事に育てた。そして、向こうから近寄ってくるのを待った。そうして、数週間が過ぎたころにはすっかり慣れてしまって、名前を呼べばすぐに来るようになった。そのころはとてもヤンチャで、ケージの外に出すと(ケージの周りに遊べるスペースを柵で囲ってつくっている)、ケージを垂直に登っていく。見ているととても危なっかしいので、かじり木をケージの外側に取り付けて、それを階段代わりにしてケージの屋上へ登れるようにした。それでも彼(オスです)は、ケージを垂直に登った。

 いま、彼は3歳になった。人間でいうと、30歳くらいの換算になるらしい。立派な大人になった。彼はいまでは、ケージを垂直に登ることはしないし、自分の食べ物の好みもはっきりしてきて、こちらがいろいろバリエーションをつけても食べたりしない(味見すらしない)。移動ルートは決まっていて、ケージの屋上に登るときは、かじり木の階段を使う。ケージ内の低い位置にあるかじり木はなくなるまで全部かじってしまうけど、高いところにあるかじり木は階段だとわかっているので、決してかじらない。一環して動きに無駄がなく、冒険はしない。

 これというのは、人間と同じだなと思った。子供のころはいろんな方法を試していたのに、大人になると、決められた(あるいは自分で決めた)方法を毎日繰り返すだけだ。目的を達成する方法はいくつもあるはずなのに、一つの方法を繰り返すだけでべつの方法は決して試さない。試すとしても、現在の方法の延長上にあるルートだ(写真でいうと、カメラを変えたり、レンズを変えたり)。毎日同じ方法を繰り返しているだけなのに、今日は異なる結果を期待している。それが大人なのかもしれない。

 だが以前、自分の写真がちょっとだけ変わったかもと思った時期がある。当時、なにをやったか振り返ってみると、写真の目的を考えていたような気がする。目的を「イメージ」するのではなく、文字で書けるくらい具体的にしてみる。ひたすら目的を考えれば、何を、どう撮るか、といった写真のゴールを決めることができる。ゴールが決まったら、それに必要な環境や機材を整える。機材ありきの発想とはまるきり逆になっていることがわかる。いろんな方法を試そうとするとき、こういったアプローチの仕方ができるのも、また大人なのだ。

 さて、写真は、長崎市の水辺の森公園に隣接して建っている「メットライフ生命長崎ビル」。長崎県美術館とは運河を挟んですぐ隣に位置している。2005年に竣工した当時は、AIGスター生命とアリコジャパンのコールセンターとして利用されていて、「AIG長崎ビル」という名称だった。その後、AIGスター生命はジブラルタ生命と合併し、アリコはメットライフの傘下となり、ビルの名称は現在の「メットライフ生命長崎ビル」に変更された。

 建物の設計はシンガポールのSeNNeXという会社が担当したようだ。外観はまず長崎では類を見ない恰好の良さ。二枚の写真は西側から撮影した。今回は午後に撮影したので、東側は撮っていないが(逆光になる)、この日、西側からは運よく?雲がいい感じで撮れた。建築写真は、空が絶対に青じゃないといけないわけじゃない。今回のメットライフ生命ビルは曇天がよく合っているように思うのだけど、いかがだろうか。

 2023年9月某日撮影

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