版画家・棟方志功を描いた、原田マハ氏の最新作「板上に咲く」を読んだ

池島

 元キュレーターで現在は小説家の原田マハ氏の最新作「板上に咲く」を読んだ。「楽園のカンヴァス」がとても好きで、それがきっかけで原田氏の美術小説をよく読むようになった。

 「板上に咲く」は、昭和初期に活躍した版画家・棟方志功の物語で、その妻・千哉子の視点で描かれている。ゴッホの「ひまわり」に影響を受け、上京して油彩画に熱中する棟方志功。展覧会に出品しては落選する、悶々とした日々を送っている。あるとき、川上澄生の版画を見て感動し、版画家としての道を志すようになる。そして、自らの版画が展覧会で柳宗悦や河井寛次郎の目にとまり、そこから「世界のムナカタ」と呼ばれるほどの才能を開花していく。

 棟方志功の版画は、白と黒だけで描かれたものだけでなく、色がつけられたものもある。私はどちらかというと墨だけで描かれたもののほうが好きだ。今更ではあるけれど、昨年くらいから森山大道氏のモノクロ写真を見るのが好きで写真集をよく買っている(その影響もあって、このサイトでは写真をモノクロで掲載したりしている)。森山氏は元々デザイナーらしいのだけど、写真家には美術や音楽をやっていた人が多いように思う。自分の感性を作品としてアウトプットするとき、キャンバスや楽譜が写真に変わっただけなのかもしれない。

 森山氏は、とにかく撮れ! という人。この小説のなかで棟方志功も、とにかくいつも描いているような人だ。才能というより、情熱がすごい。原田氏の公式ホームページに載っているインタビューに「棟方の人生を見たことで、諦めなくてもいいと思えるようになりましたし、その思いを(読者と)シェアしたい」とあった。どんな状況でも決して諦めなかった棟方志功。これを読むと、やる気が湧いてくる。

 さて、写真は前回に引き続き、長崎県の池島。全9回にわたって連載でお届けした池島シリーズだが、昨年末に撮った写真は今回でひとまず終了。また近々撮影に行きたいと思っている。

 2023年12月某日撮影

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