画家・平山郁夫氏の2008年の著書「ぶれない」を読んだ

ヒルトン長崎

 写真家はもちろんだが、芸術家や音楽家の本を読むのが好きで、少し前に画家の平山郁夫氏の「ぶれない」を読んだ。2008年に出版されたものだ。サブタイトルは「骨太に、自分を耕す方法」である。

 「絵は描き出す前にもう9割くらいは出来上がっている」。発想が決まると直感的にイメージが湧いてくるからなのだそうだが、なるほど、私は絵を描けないが、絵を描くことは写真を撮ることに似ているのかもしれない。写真は、カメラを構えてから、どう撮ろうかと考えるのではなく、両目で被写体を見て、あるいは、被写体を見つけて、見た感動をそのまま写真として記録することが理想だ。撮る前の発想やイメージが大事だと思う。

 どんな業界でも成功者が共通して言っていることのなかに、「一流を見よ」というのがある。本書にも「一流に接して、二流は見るな」「絵を描く材料も最高のものを使え」とある。作家として「おもしろい」とは何か、料理人として「おいしい」とは何か、そういうことがわかっていないと、人に価値を提供することはできないように思う。数多くの一流に触れる機会をつくり、そこに投資を惜しんではいけない。と思って、一流の写真家の写真集をよく買っている。写真集は高い。毎回気合いが必要だ。

 最後に、本書は絵に関することだけが書かれているのではない。「お金とモノだけを追いかけるような生活からは、心の通った人間は生まれてこないと思う」といった、人生観のようなことにもふれている。若いころはそんなふうなことを大人から聞いたとき、それはそのとおりだなと、なんというか、いま思うととても軽く考えていたと思う。いまは深い言葉だと理解できる。

ヒルトン長崎
ヒルトン長崎

 写真は、GRⅢのワイドコンバージョンレンズのテストで撮った長崎市のホテル「ヒルトン長崎」。やはりGRはよく撮れる。

 2024年4月某日撮影

関連記事