目の前のことをカイゼンしようとする前に、一度目線を上げて向かう先を確かめたい

池島

 少し前に「目線を高くして歩く」といったようなことを何かの本で読んだ気がする。気がする、というのは、いったいどこで何を読んでこのフレーズを見たのか、まったく覚えていないからだ。何かのビジネス書かもしれないけれど、ひょっとして小説に出てきたのかもしれないし、雑誌のコラムかもしれない。

 仕事をしていると、うまくいかないことの改善ばかりで、それはもう終わりがなく果てしない。そういうことをそれこそずーっと考えていると、行きつくのは、結局何がやりたいのか、何を実現したいのか、世の中のどんな人にどんな価値提供をしたいのか、といった、目の前の問題点よりももっと広域な論点、そして原点に戻る。

 そういうとき、「目線を高くして歩く」というフレーズを思い出す。読書というものは、読んですぐに何かを実行しなければ役に立たないかというと、わりとそうではなく、あとで思い出すことが多い。いま結びつかなくても、いつかどこかで結びつくのだ。

 写真でも、優れた写真集を見て、すぐにそれを真似してみなくても、なんとなく美意識に残っているものである(と信じている)。

 「目線を高くして歩く」というのは、すぐ下の地面ではなく、少し先をまっすぐに見て歩くということだ。そうすると、フラフラしない。行きたいところに向かってまっすぐに歩ける。

 子供のころ、自転車に乗る練習をしていたとき、うまくなるコツは目線を上げることだった。すぐ目の前やすぐ下の地面を見ているとフラフラしてしまう。自動車の運転でも正しい運転の姿勢は、少し先をまっすぐに見ることだ。

 足元で何か問題が起きたら、もちろんすぐに解決はしなければならないけれど、解決したあとに改善を行うかどうかは、いったん目線を上げて、本当に改善が必要なものかどうか確かめる作業をやりたい。言うまでもなく時間や思考などの資源は有限だからだ。もしかすると、たいていのものは希少な問題かもしれないし、そもそも丸ごとやめたほうがいい場合だってあるのだ。

 

 さて、写真は前回に引き続き、長崎県の池島。池島の建築物でもっとも有名な「8階建てアパート」の続編。前回は車道に面した北側を紹介した。今回は、その反対の南側。エレベーターがないことへの対策だろうか、屋上には各棟をつなぐ連絡通路が設置されている。

 2023年12月某日撮影

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