高い満足を提供してくれる小さな規模のお店に自前のポイントシステムは必要ない?

長崎市民会館

 私が利用している美容室には、主に予約に使うアプリがある。アプリは以前からダウンロードしていたものの、実際に予約を入れたことがなく、飛び込みで行くことが多かった。私は美容師を指名しないので都度そのときに空いている方にカットしてもらえたのだ。ところが、それがだんだん怪しくなってきた。満席のため出直しを余儀なくされることが増えていったのである。

 そこでさすがに電話で予約を取るようになったのだが、周囲の人がアプリで予約しているのを見て、私もアプリを使うようになった。知らなかったのだが、そのアプリには利用するたびに自動で付与されるポイントシステムがあった。アプリを使用しようがしまいがポイントは付いていたようで、気がついたときには、もう7千ポイント(1ポイント1円で利用可能)くらい貯まっていた。カットだけなら2回くらい無料でやってもらえるほどである。

 だが、私はポイントの存在を知ってからも使う気にはなれなかったし、実際、一度も使っていない。たしかな技術を提供してもらい、毎回満足しているのに、ポイントを使うことで値引きを要求しているようでなんだか申し訳なかったからだ。

 だが、実際はポイントと値引きは同一ではない。ポイントは自店を何度も利用している得意客に対して還元しようとしているが、値引きは一見客も対等だからだ。値引きは、たとえば、スーパーが賞味期限が近い商品を安く提供するように、何か欠点を補うためにやるものであると私は思う。だから、何かトラブルが発生したり、失敗をしたとき、つまり顧客に満足を提供できなかったとき以外は、値引きをするべきではない。

 新規、新規の集客では長く続かないので、リピートを促すポイントシステムはたしかに有効な手段だと思う。それに、強力だ。けれど、個人的にはポイントシステムをほとんど利用しない(お金持ちではないし、お得が嫌いなわけでも決してない)。気に入ったお店には、正当な対価を稼いで長く存続してもらいたいと思うから定価を支払う。一方、そうでないお店は、たとえポイントがあっても利用しないからだ。そんなわけで、私はポイントカードを一枚も持っていないし、アプリもポイントが目的でダウンロードすることはない(ドラッグストアでは毎回すすめられるのだけど)。

 大手企業のポイントカードにはリピートを促す以外に別の目的もあると思う。たとえば、コンビニではポイントシステムを利用して、〇歳の男性もしくは女性が何と何をどんな時間帯に買ったか、といった顧客の購入動向を調べることができる、というのは一般的によく知られている。言ってしまえば、そういった目的で導入していない、小さなお店や企業のポイントカードは個人的には必要ないと思っている。それより、顧客の満足度を高めるサービスや商品、技術の質をとことん上げていくことのほうが何倍も大事だと思う。

 さて、写真は、長崎市民会館だ。1974年に完成した建物で、石本建築事務所が設計したものである。現代では先端までフラットな形のビルが多いなか、上階が四方に飛び出た形をしていて斬新なデザイン。当時はとてもモダンな建物だったに違いない。良き時代のアトモスフィアを漂わせている。しかし、とても残念だが2026年以降、この市民会館を廃止にする方針が発表されている。

 2023年9月某日撮影

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