2024年の直木賞を受賞した「ともぐい」を読んだ

 2024年(第170回)の直木賞を受賞した小説「ともぐい」を読んだ。最初は、人間VS熊の壮絶な戦いを描いた作品だと思っていた。もちろん、そういうシーンもあるので間違いではないのだけれど、メインはあくまで主人公の人生観や人生そのものを描いている。

 舞台は、日露戦争直前の北海道。主人公は、山で猟師をして暮らしている。人と交わることをあまり好まず、猟で獲った鹿や熊などを売り、その金で猟銃の弾や米などを買うために、たまに人里まで下りてくる。里の人は、その風貌や体臭(山には風呂がない)、銃や猟犬などを嫌がり、異様なものを見る目つきで主人公を見る。

 ある日、山で怪我をした男を発見する。その男は別の山からある熊を追ってここまで来たという。その熊から反撃をくらい、両目を失明する大怪我を負ったのだ。この出来事がきっかけとなり、変わるはずがなかった主人公の人生が大きく変化していく・・・。

 主人公の名前は熊爪といって、もちろん本名ではなく、主人公を育てた猟師が付けた名だ。本名はない。親や子もいない。猟師であるため、生き物を殺すことになんのためらいもない熊爪。情緒というものが感じられず、物事に対して直感的な思考で複雑にしない。とても動物的な発想なのだ(それこそ熊みたいに)。

 さすがに、直木賞ははずれが少ない(私見です)。迫力があっておもしろかった。あれ? ここで終わりじゃないの? という場面で物語はまだ終わらず、そのあとに続くラストの展開には驚く。

 さて、写真は、炭鉱の島・池島。今日から何回かにわけて紹介してみたい。今回は、池島のフェリー乗り場からほど近い団地エリア(いまも住居として使われているようだ)。

 池島は、長崎市から国道202号線を海岸線沿いに佐世保方面へ北上したところに浮かぶ小さな島だ。炭鉱が全盛のころは、この小さな島に約7千人もの人が住んでいたという。長崎には通称「軍艦島」という、同じく炭鉱の島で全国的に有名な端島がある。端島と異なり、池島は今でも有人島で現在100人ほどの人口だ。

 2023年12月某日撮影

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