8月23日に公開されたばかりの映画「ラストマイル」を観た

京都タワー

 映画「ラストマイル」を観た。事前情報としてまったく知らなかったのだけど、ラストマイルは、塚原あゆ子監督×野木亜紀子脚本という最強タッグの日本版アベンジャーズだった。主演の満島ひかり、岡田将生ら、本作のオリジナルキャストのほかに、過去にテレビで放送されたドラマ「アンナチュラル」と「MIU404」のキャラクターも登場する。

 私は「アンナチュラル」や「MIU404」を観たことがないので、なぜ劇中に登場するチョイ役に主役級の豪華俳優を大量にキャスティングしているのか、その意図まではまったくわかっていなかった。しかし、これはファンの人にはたまらない演出だったに違いない。個人的には、脚本家の古沢良太シリーズでアベンジャーズをやってくれたら必ず観るし、感激すると思う。

 タイトルになっている「ラストマイル」とは、物流の最後のセクション、顧客の手元に荷物を直接届ける配送のことを指す。巨大ECモールのメインイベント「ブラックフライデー」の慌ただしい物流をテーマにした映画だ。届いた荷物が爆発するという、よくある「テロ映画」かと思っていたけれど、実は現代の社会問題を描いた作品だった。

 巨大ECモールの流通センターのセンター長として赴任してきた主人公は、物語の後半でこう言う。「1年目はやりがいを感じ、2年目は順調、3年目は眠れなくなった」。

 大手宅配企業から最後のバトンを渡され、まさにラストマイルを担う個人事業主の親子はこう話す。父「やっちゃんは弁当(昼メシ)を10分で食べて配送トップになったんだ。早く食べろ!」。息子「でも、やっちゃんは死んじゃったじゃないか」。

 仕事は、ステップごとに分解して、分解した仕事を一か所にまとめる。そうしたほうが、効率化はもちろん、適材適所の人事ができて働きやすいというメリットがある。しかし、近頃ちょうど私はそういった働き方に疑問を感じていた。仕事の部分だけを一か所に集めて、それだけに特化して働くことがヒトの労働環境として本当に良いことなのだろうか。

 「それしかやらない」という作業のような仕事は、どちらかといえば機械のほうが得意なのではないか。機械に代替可能な仕事というのは、替えが効く。ヒトが機械化してしまい、いつでも交換が可能な状態となる。そうした働き方に疲れてヒトが辞めていき、また新しいヒトが入る。これを延々と繰り返す。これが本当にヒトとして健康な働き方だろうか。そんなことを考えていた矢先に、ちょうどこの映画を観たのだ。

 効率化は「負」の部分も一か所に集まりやすい。コールセンターなどがそうなのではないか。みんなで「負」を分担すれば、それほど多くのストレスを抱えずに済むのに、一か所に集めることで膨大な「負」を少数の人が一手に引き受けることになる。ラストマイルの舞台になっている流通センターがまさにそうだ。数を集中させると効率的だけれど、ストレスも集中することになる。

 劇中の流通センターで働く人は、派遣社員が700人に対して、正社員はわずか数人。バスで大量の人間がセンターに運ばれてくるシーンがあった。18世紀や19世紀の産業革命時代はこんな感じだったのかもしれないと想像してしまう。産業革命は、単純労働に起因する労働環境悪化の問題(誰にでもできるので労働力が安く買いたたかれる)や、それによって貧富の差を生み出した、と昔習ったことを思い出した。

 写真は、GRⅢで撮った京都の風景。最大クロップ(フルサイズ換算50mm)で撮影し、さらにトリミングしているので、画質はだいぶ粗い。4000万級の高画素機の登場を待つ。それでも手持ちで軽くスナップ撮影して、これだけ雰囲気のある写真が撮れるのだから、GRはやめられない。

 2024年8月某日撮影

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