アアルトコーヒーのロースター庄野雄治氏の著書「誰もいない場所を探している」を読んだ
徳島のaalt coffee(アアルトコーヒー)のロースター、庄野雄治氏の著書「誰もいない場所を探している」を読んだ。ロースターになるまで、そして、実際にコーヒーが売れるようになるまでが綴られている。庄野氏は読書家でもあるようで、彼が編集した本「コーヒーと小説」や「コーヒーと短編」などには、これまでにもお世話になった。
というのも、私も読書好きではあるが、大正や昭和初期の小説家(芥川龍之介や太宰治ら)の作品をあまりというか、情けないことにほとんど知らないのだ。彼が編集したそれらの本は、そういった昔の作家の短編セレクト集になっていてとてもおもしろかった。
「誰もいない場所を探している」には、次のような言葉が出てくる。
「同じ道具を使って同じコーヒーを淹れ続けていると、美味しく淹れられるコツのようなものが体でわかるようになる」
「自分というものが完全になくなった頃から、遠くから買いに来てくれるお客さんや、わざわざ通販で注文してくれる方も増えていった」
「全力でやらなきゃと思った時点で、それは自分に向いていないんだ」
なるほど。カメラを次々と変えてもぜんぜんうまくならないし、クライアントが望む写真が撮れなきゃ意味がないし、いい写真を撮ることが努力だと思ったら辛くなる。
「自分なくし」については、以前にもみうらじゅん氏の著書からも学んだことがある。昔、若くして土門拳賞を受賞した金村修氏もテレビ番組に出演したとき「被写体のためにカメラマンがいるのであって、カメラマンのために被写体があるのではない」というようなことを言っていた。共通しているのは、どれも徹底して相手が望むものを提供する、つまり相手のために自分がいる、ということだ。頭ではわかっていてもなかなかできない。
さて、写真は、長崎市の日本銀行長崎支店。1978年に三菱地所の設計で建てられたものだ。日銀のホームページによると、全国の日本銀行のなかでもユニークなつくりなんだそうだ。
2023年10月某日撮影